【論文紹介1】Heidhues et al. (2021) Browsing versus Studying: A Pro-market Case for Regulation. RES

「携帯料金のような"見えにくい価格"がある市場にはどのような規制が有効?」

携帯の利用料金のように基本料金+複雑な追加料金という料金体系を取るサービスは数多く存在する.そのような取引に対して,従来の経済学が仮定する「合理的な」消費者はどんなに複雑な料金体系であってもきちんと支払う金額を把握している.一方で,近年の行動経済学が仮定する「ナイーブな」消費者は複雑な追加料金を全く考慮しないで基本料金が最も安いサービスを購入する.この論文はいわばその中間のようなモデルを考えている.消費者は追加料金の存在を認識している一方で調査能力には限界があり,ある商品の追加料金(=studying)もしくは別の商品の基本料金(=Browsing)のどちらかしか知ることはできない.すなわち,「調査能力が限定的な合理的個人」として消費者をモデルしている.この論文では,そのような消費者が存在している市場において企業の価格競争及び政府による価格規制を議論する.そして規制がなければ企業が独占価格を課す均衡に至ることを示した.(企業は複数いるものの,均衡では消費者はstudyingを行い実質独占状態になり価格競争が働かない.)また規制については,追加料金に対する規制は企業が完全競争する均衡を導くという意味で有効であり,一方で合計金額に対する規制は結局価格を規制の上限金額に設定する均衡を導くという意味であまり有効ではないという結論にいたることを示した.(追加料金の規制→消費者が安心してstudyingからbrowsingに切り替える→価格競争が働く.)
◎規制が競争を産むという構造が面白いと思う.

応用先(メモ,元論文より):
health insurance, EU's principle on unfair contract terms, food safety in developing countries, shopping behavior of low-income and high-income consumers